「うちのヒメダカに模様が入った!」
メダカを飼育していると、こうした驚きの変化に気づくことがあります。特に、無地だったはずのメダカに、まるで模様のような色むらや柄が現れることがあります。今回は、その不思議な現象の正体と、多くの人が疑問に思う「その模様は遺伝するのか?」という点について、メダカの飼育を楽しむためのヒントを交えながら解説します。
なぜ?メダカの模様が変わるメカニズム
メダカの模様の変化は、主に「保護色」という機能と、健康状態の変化によるものです。
1. 飼育容器の色による「保護色」の変化

メダカは、外敵から身を守るために、周囲の色に合わせて体色を変化させます。これが「保護色(背地反応)」と呼ばれる能力です。
- 白い容器で飼育すると、メダカは色素を凝縮させて体色を薄くします。
- 黒い容器で飼育すると、色素を広げて体色を濃くします。
ヒメダカのような単色のメダカでも、飼育環境を変えると、体表の色素の広がり方に差が出て、色の濃淡が模様のように見えることがあります。これは、一部の色素胞が環境の変化に反応しきれず、結果としてまだら模様に見えるためです。
2. 健康状態やストレスによる変化
メダカの模様は、健康状態やストレスのサインとしても現れます。
- ストレスや病気:水質の悪化や過密飼育などでストレスを感じると、体表に白っぽいまだら模様が現れることがあります。これは、色素細胞の機能が一時的に低下している状態です。
- 急激な水温変化:水合わせが不十分な場合など、急激な水温の変化もメダカの体に負担をかけ、一時的に不規則な模様を引き起こす原因となります。
こうした模様は、メダカが環境に順応しようとしているサイン、あるいは体調を崩しているサインである可能性が高いです。
【重要】メダカに現れた模様は遺伝する?

多くの人が気になるこの疑問。答えは「NO」です。
飼育環境や健康状態によって現れた模様は、あくまで一時的な生理的変化であり、遺伝子の配列が変わるわけではありません。
たとえば、白い容器で育ててまだら模様になったメダカを、健康的な飼育環境に戻すと、模様は消えていきます。そして、そのメダカが産んだ子どもも、親と同じように環境に応じて体色を変化させますが、親に現れた模様が遺伝することはありません。
メダカの遺伝は、親が持っている遺伝情報(例えば、楊貴妃の赤い体色や、三色の模様)によって決まります。新しい模様や柄を持つメダカを生み出すには、遺伝的な形質を持つ個体同士を交配させ、特徴を受け継ぐ子どもを選抜していく必要があります。これを繰り返すことで、世に言う品種改良メダカが誕生するのです。
ブチメダカとは?
「ブチメダカ」とは、文字通り、体に斑(ぶち)模様が入ったメダカの総称です。主に、ヒメダカのような緋色(オレンジ色)や白、青といったベースの体色に、黒い斑点やまだら模様が入るのが特徴です。
- 漢字では「斑メダカ」と書かれることが多く、その模様の入り方は個体によって様々で、一点だけ入るものから、体全体に広がるものまで、個性豊かな柄を楽しむことができます。
- 紅白メダカや三色メダカのルーツとも言われており、これらのメダカを繁殖させているうちに、先祖返りでブチメダカが生まれることもあります。
- 保護色の影響を受けやすく、白い容器で飼育すると模様が薄くなり、黒い容器で飼育すると模様が濃くはっきり現れるという特徴があります。
ブチメダカの模様は遺伝する?
はい、ブチメダカの「斑(ぶち)」の模様は遺伝します。
ブチメダカの模様は、先ほど説明した「飼育環境による一時的な変化」とは異なり、遺伝子レベルでその形質が決定されています。そのため、ブチメダカ同士を交配させると、その子どもたちにもブチ模様が現れる可能性が高いです。
ただし、遺伝の仕方はメンデルの法則に従い、親から子にどのような形で形質が受け継がれるかは様々です。
- 選抜交配の重要性:ブチの面積や濃さ、模様の入り方など、より理想的な個体を選んで交配を繰り返すことで、親の特徴をより強く受け継ぐ子どもを増やしていくことができます。このプロセスが、新しい品種を生み出す品種改良の基礎となります。
まとめ:メダカ飼育をもっと楽しむために
メダカの模様の変化は、飼育者の工夫次第で引き出すことができます。
- 色を濃くしたい:黒い容器や濃い色の砂利、赤玉土などを利用してみましょう。
- 健康的な体色を維持したい:水質をきれいに保ち、適切な水温と栄養のある餌を与えましょう。
メダカの模様は、そのメダカが置かれている環境のバロメーターでもあります。メダカからのサインを読み取って、より良い飼育環境を整えることで、愛メダカはさらに魅力を増してくれるでしょう。
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