※この記事は、会社の業務・社内決裁・監査対応に関する話です。
社内規程や運用は会社ごとに異なるため、一般的な考え方として参考にしてください。
「1台ずつなら部長決裁で済むけど…」
業務用PCを2台購入したい。
それぞれ別の社員が使う個人PCだし、1台ずつ申請すれば部長決裁(20万円以内)で収まる。
でも、ふと不安になります。
- これって監査的に大丈夫?
- 分割申請って言われない?
- まとめると上位決裁になるけど、分けたら楽なんだけど…
この記事では、「PCを2台買うときに分けて申請してよいのか」を、
監査・内部統制の視点から整理します。
承認権限は「1個1個」に対するもの?
多くの人が、まずこう考えます。
承認権限って、
1台のPC、1件の申請ごとに判断されるものでは?
これは、規程の文言だけ見れば正しい理解です。
多くの会社では「1件あたり○万円まで部長決裁」と定められています。
なぜ分割が問題になるのか(考え方の根拠)
ここでは、具体例ではなく「思想・前提」だけを整理します。
内部統制は「判断の暴走」を防ぐ仕組み
会社の中には、
- 予算
- 承認権限
- 決裁ルール
があります。
これらは、不正防止だけでなく、
重要な判断ほど、複数の目で確認する
ための仕組みです。
決裁権限は「判断の重さ」に応じて設けられている
決裁権限は、
- モノの数
- 書類の枚数
ではなく、
会社としてどれだけ重い判断か
に応じて設計されています。
分割は「判断の重さ」を見えにくくする
本来1つとして判断すべき内容を分けると、
- 金額が小さく見える
- 判断の重要性が過小評価される
状態が生まれます。
そのため監査では、
- 形式より
- 制度の趣旨に沿った判断か
が重視されます。
📎 参考
内部統制と購買・承認プロセスの考え方
https://biz.moneyforward.com/ipo/basic/2845/
なぜ「分割申請」は監査で問題になるのか(PC2台の具体ケース)
ここからは、実務の話です。
監査でまず見られるポイント
- 最初から複数台必要だと分かっていたか
- 同じ部署・同じ目的か
- 意思決定は1回だったか
ここで、
「最初から2台必要と分かっていた」
と判断されると、
実質的に1件の購入として扱われます。
「1台ずつ申請」はどう見えるか
たとえ、
- 使用者が別
- 申請書が2枚
- 金額がそれぞれ承認範囲内
でも、監査では、
「承認しやすい形に分けただけでは?」
と見られる可能性があります。
監査でよく聞かれる質問
「なぜ、まとめて申請しなかったのですか?」
ここで
「金額が超えるから」
という理由は、決裁権限の趣旨と合いません。
「片方がなくても成立する」が弱い理由
監査が見ているのは、
- 誰が使うか
ではなく - 会社として、どう判断したか
です。
時期をずらしてもNGになることがある
- 最初から2台必要と分かっていた
- 判断は事実上1回
この場合、
意図的な分割と評価されやすくなります。
※「予算上、別々の月で計画されている」だけでは、実はまだ弱い。
ただし、条件がそろえば「別件」として成立する可能性は十分あります。
分割申請がOKになりやすいケース
次の場合は、別件として説明しやすくなります。
- 1台目申請時点では、2台目が未確定
- 人員増・体制変更などが後発
- 意思決定のタイミングが明確に別
- 理由文で時系列説明ができる
実務で一番安全な判断
迷ったときの結論は、これです。
最初からまとめて申請し、上位決裁を取る
監査的には、
- ルール理解ができている
- 判断を正しく上げている
と評価されやすい行動です。
👉 日本の内部統制制度(J-SOXの公式ガイドライン)では
「分割申請=必ずNG」とは書かれていません。
分割したかどうかは問題ではなく、
「なぜそうなったか」を説明できるかが重要ということです。
上位承認を避けるために、ルールを回避しようとした意図に基づく行動が、問題となってしまうのです。
まとめ
- 承認権限は「個数」ではなく意思決定の重さ
- 使用者が別でも、同時期・同目的なら1件扱い
- 時期ずらしは理由が説明できなければNG
- 迷ったらまとめ申請が最も安全
補足:実際の監査指摘例(日本語)
行政の内部統制評価でも、
不適切な分割発注が指摘対象になっています。
📎 参考(杉並区 内部統制評価報告)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/documents/6395/houkoku14.pdf
最後に
この手の話は、
- 規程に明確に書いていない
- なんとなくやっている
で流されがちです。
でも、監査は「実質」を見ます。
この記事が、同じ立場で悩む人の判断材料になれば幸いです。

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